熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
3.防災教育と教職員の災害時対応のあり方について

(1)未来への教訓を織り込んだ副読本の作成
(2)教職員のレベルアップと体制の強化

◆(城下広作君) 大きな災害があった後に、忘れてはならない2つの風ということをよく聞きます。1つは風化、1つは風評ということでございます。これだけの我々は大変な震災を経験しましたので、後世に忘れずに、また、教訓として受け継がれるような形でしっかりと考えていただきたいと思います。
 それでは、3番目の質問でございます。
 防災教育と教職員の災害時対応のあり方についてであります。
 先ほどの質問で触れましたが、ことし1月13日に兵庫県庁を訪れました。目的は、昨年の熊本地震で被害を受けた中で、特に、心理的ダメージを負った児童生徒への対処の方法や学校教育の中での防災教育の取り組みについて、そして教職員の防災対応の充実について、兵庫県教育委員会の対応を参考にさせていただくため、訪れました。
 初めに、心理的にダメージを負った児童生徒の心のケアについては、阪神・淡路大震災では、多くの子供たちが肉親を失ったり、死傷者を目の当たりにしたり、自宅が倒壊するなど、大きな精神的ショックを負いました。
 兵庫県では、発災の翌日から今日まで、教育機関や行政機関、福祉施設機関などに人的配置や相談体制など、支援の充実に全力を挙げて取り組んできたそうです。本県も、中長期的な対応が求められると思いますが、本県の今後の対応が気になるところです。
 また、児童生徒への防災教育についてもさまざまな対応をされてきた中で、特に気になったのが、兵庫県では、震災2年後に「明日に生きる」と題した防災教育副読本を、小学校低学年、高学年用、中学生用、高校生用に区別して作成したそうです。
 その中身を見てみますと、大きく3つを柱とする、1つ目は、知、知るでございますが、科学的な理解を深めるとして、災害の歴史と防災対策を理解し、自然環境、社会環境と防災との関係や自然災害の種類とメカニズム等を科学的に理解するとしています。2つ目に、技、わざでございますが、かけがえのない生命を守るとして、建物の耐震補強や家具の固定、応急措置、心肺蘇生法、ストレスの対応等の技術、技能を身につける。3つ目に、心、人間としてのあり方、生き方を考えるとして、生命の尊重や他者への思いやり、触れ合いを大切にする心、社会に貢献する心等を育成するが柱となり、教科ごとにテーマを設け、作成されています。これは、通常の授業の中でしっかり防災の意識を高める狙いがあると思います。
 なお、平成24年1月には小学生用が改訂され、平成25年3月には中学・高校生用が改訂されています。
 そこで、私は、熊本地震では2度の大地震を経験した本県の児童生徒に対して、世界でも類を見ない災害の経験を生かし、また、後世に伝える人材として副読本を作成し学んでいくことが、災害の風化を防ぐ取り組みにつながるのではないかと考えますが、本県においても、県の災害の歴史や避難の仕方、未来への教訓を織り込んだ副読本の作成についてはどのように考えておられるのか、県の考えをお伺いいたします。
 次に、学校現場における教職員の防災対応の育成についてお伺いいたします。
 やはり兵庫県でも学校等が避難所になったことから、震災直後から教職員の方は避難者等の対応に相当取り組まれたそうです。みずからも被害を受けた方も多く、そうした中での作業は、かなりのストレスを負い、中には体調を崩される方も多かったと聞きました。
 しかし、いざ災害等になれば、教職員の存在は、児童や生徒、地域住民にとって、なくてはならない存在です。
 そこで、災害時の初期段階では早急な応援体制は望めないことから、限られた人数での初期対応が全ての鍵を握ります。
 今日まで、本県の教職員の方々が、防災教育を学び訓練されていることも伺っています。また、県教育委員会では、2017年から、県立学校が防災拠点として機能するように、保護者や地域住民が学校運営に参加するコミュニティースクールの導入も進めていると聞いています。
 ぜひ、災害時の避難所運営にその機能が発揮できるよう頑張っていただきたいと思いますが、例えば兵庫県では、現役の教職員による非常災害発生時の学校支援組織で、防災の専門知識と実践的対応について訓練、研さんを積んだ県内の公立学校教職員及びカウンセラーでEARTHを編成し、防災対応のスペシャリストを育成しています。今回の熊本地震の際も、7回熊本に派遣されています。
 EARTHは、阪神・淡路大震災のときお世話になった恩返しとして結成されたそうですが、兵庫県の場合、このような取り組みを模範としながら教職員のレベルアップを図っておられます。
 そこで、本県の取り組みについて、教職員の日々の忙しい業務の中で、今後どのような取り組みで防災対応のレベルアップと体制の強化を図ろうとしているのか、以上2点、宮尾教育長にお尋ねをいたします。
  〔教育長宮尾千加子さん登壇〕