熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
7.特別支援教育の現場と今後の取組みについて
◆(城下広作君) ありがとうございました。
時間がありませんので、次に移りたいと思います。
特別支援教育の現状と今後の取り組みについてお尋ねをしたいと思います。
先ほどのいじめ問題とも深く関係すると思いますが、近年、子供たちに関係することでさまざまな出来事が起こっております。特に昨年は、非常に痛ましく、やり切れない思いを抱かせることが教育現場の内外を問わず起こりました。なぜこのようなことが次から次に起こるのでしょうか。子供たち自身に何が起こっているのでしょうか。また、子供たちを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。
そこで、どうしたら子供たち一人一人のことが理解できたり、ニーズに合った教育ができるのかを考えたところ、平成19年度より国が進める特別支援教育に一筋の光を見出しました。
平成17年に、文部科学省中央教育審議会により「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」の答申が出ておりますが、この中の「第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方」の中に「「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。」とあります。
つまり、特別支援教育は、障害のある子供たちのためにだけあるのではなく、その視点に立つことで、すべての子供たち一人一人のことを生活と学習の両面で考えるというものであり、これはまさに潮谷知事が常日ごろ行っておられるユニバーサルデザインの教育版にほかならないものだと思います。
したがいまして、県においては、この理念を十分理解して、既に数々の取り組みがなされていると思いますが、その現状や課題、今後の予定などについて、具体的にお尋ねをしたいと思います。
そもそも特別支援教育という、子供たちにとってこのような有益な取り組みがなされようとしていることについての背景を、いま一度確認しておきたいと思いますが、1990年ごろより、学習障害、LDや注意欠陥多動性障害、ADHD等の知的障害はないけれども、読み書きや落ち着き、注意力などに障害がある子供たちが通常学級に散見されるようになり、近年は、高機能自閉症やアスペルガー症候群などの社会性、コミュニケーションやイマジネーションの障害のある子供たちも通常学級に少なからず在籍していることが知られてきました。
これらの子供たちは、いわゆる発達障害と言われている子供たちで、過去の障害児教育の概念の中にはほとんど含まれていなかったものであります。先般の文部科学省の調査では、6.3%という数字が出ております。しかし、専門家らによると、その対象は少なくとも2割は見ておいた方がいいという意見もあります。
また、発達障害の子供たちの特徴の一つは、その気づきや診断の難しさがあり、そのために、さきに述べました理念と基本的な考え方の中に「障害に関する医学的診断の確定にこだわらず、常に教育的ニーズを把握しそれに対応した指導等を行う必要があるが、こうした考え方が学校全体に浸透することにより、障害の有無にかかわらず、当該学校における幼児児童生徒の確かな学力の向上や豊かな心の育成にも資するものと言える。」とあります。
つまり、特別支援教育は、発達障害の子供たちのことから端を発したことでありますが、すべての子供たちのためのものであることは疑いのないことであります。
そこで、質問の第1点目ですが、発達障害支援法第4条に国民の責務が述べられていますが、そのためには県民への理解、啓発が欠かせないと思います。現在までの取り組みと今後の対応についてお尋ねをします。
第2点目に、何の問題でもよく取り上げられますが、質の確保に関することであります。
さきに述べましたように、発達障害への対応は従来余りなかったことでもあり、新たな専門性の確保が必要になってきていることだと思います。そのために、全国でさまざまな取り組みが行われており、全教職員への研修必須化を実施した他県の自治体もあると聞いております。LD学会などによると、この専門性認定制度では、約100時間にも及ぶ試験つきの研修を課しているということも聞いております。
そこで、現在、県教育委員会では、特別支援コーディネーターの育成に取り組んでいると聞いていますが、その研修内容の実態並びに中心的役割をなす県立教育センターの機能充実のための方策、さらには各圏域教育事務所などの担当指導主事の専門性の向上のための研修、そして、最も重要と言われている校長先生、また教頭先生の管理職の発達障害理解のための研修など、現状と今後の対応についてお尋ねをします。
第3点目ですが、発達障害の子供たちに端を発した特別支援教育は、現時点では、発達障害者支援法第8条、学校教育法の一部改正――第75条ですけれども、そして先般施行されました教育基本法の第4条により法的根拠は整備しつつあります。また、予算措置に関しても、国のレベルでほかの部門の予算がある意味では軒並み減少している中、発達障害に関しては一昨年より軒並みアップしております。
このことは、それだけ重要な問題であると国が認識しているということでありますけれども、国の交付税措置による対応だけで十分と考えているのでしょうか。県としては、独自の予算として今後考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
さきの答申でも、喫緊の課題と答申されております。したがいまして、学習支援員、巡回相談員、コーディネーター等を初めとする人的配置の県単独予算の計上並びに発達障害者支援センターへの教育委員会からの人員派遣などの予定はないのか、お聞きしたいと思います。
なお、発達障害者支援センターへの人員派遣は唐突に感じられるかもしれませんが、私の聞いた範囲では、同センターへの相談や訪問、研修派遣依頼など、過半数を超えるものが児童、学童、学校に関するものだと聞いておりますので、教育もコラボレートすべきものだと考えているものであります。
第4点目でございます。
発達障害が学校現場のさまざまな問題とリンクしていることについて伺いたいと思います。
学校現場におけるいじめ、不適応、不登校、非行などにおいては、発達障害と深い関係があり、ある報告によると、不登校の子供の5割は発達障害の子供たちであると言われています。さらには、学力の向上や人権問題、虐待とも関連していると聞いております。また、昨年秋には、ニートも、少なくとも2割以上の発達障害の青年であると報告がありました。
つまり、発達障害の対応なくして、いじめ、不登校、不適応、非行など、ゼロに近づくことは難しいということになります。さらに、ニートとの関連も含めますと、小中学校教育現場のみならず、高校教育の現場でも特別支援教育が必要であることは明らかであります。現在のところ、県下で特別支援教育の実践ができている高校は少ないようです。
そこで質問でありますが、現在、いじめ、不登校、非行、人権問題、学力向上、ニート、虐待などの取り組みに、特別支援教育の視点がどのように取り入れられ、どのように実践されているのか、それぞれについてお尋ねをします。
最後に、現在、特別支援教育への対応として、高校教育課の特別教育指導係を、18 年から特別支援教育係に改めたと聞いておりますが、発達障害を持つ子供たちのみならず、いじめ、不登校、非行、人権問題、ニートなど、これほど重要な問題であるにもかかわらず、1課の1係のままでいいのでしょうか。教育の中の各部門、福祉、医療、労働など、さまざまな分野での横断的な取り組みが必要だと考えます。
国においても、昨年6月に、文部科学省と厚生労働省を横断的に組織化し、厚生労働事務次官を代表責任者として発達障害対策戦略推進本部を設置されております。県においても、特別支援教育課の設置や知事部局と教育委員との連携をどのように図っていくのか、お尋ねをいたします。
〔教育長柿塚純男君登壇〕